Heart of gold 〜クリスマスだからじゃない〜  

 

「冬には奇跡が起こりやすい? はぁ。何だよそれ」
「えー、だってさ、クリスマスだよ?なんかステキなことがありそうな気がしない?」
マルセルの言葉に俺はあっけにとられる。どこからンな発想が出てくんだか。
「はあ?ンなわけねーだろ。そんなめでてーことがあってたまっかよ」
「もう、ゼフェルってば、夢がないなぁ」
あのなー、夢がないって・・・なんだそりゃ。

「マルセル、そんなにふくれるなよ。ま、確かに何かあったらいいとは思うけどね…」
ランディが苦笑しながら口を出す。
「だってさー。ねぇルヴァ様、そうですよねー。この時期ってそういう気分になりますよねー」
俺やランディの反応が奴の期待するものでなかったらしくマルセルはルヴァに同意を求める。
「ええ、確かにそうであってほしいですね。
確率や科学的なものではありませんが、人々がクリスマスと次に来る新しい年を前に、これまでの自分の生活を振り返りつつ、
それぞれの大事な人の幸せを願ったり、優しい気持ちになるからかもしれませんねぇ」
「ふーん、よくわかんねーけどな。そーゆーもんなのかよ」
「あー、もう、ゼフェルってばロマンのカケラもないんだから!」
「何だよ!どーせ俺は即物的ですよ。ロマンのかけらもありませんよ」
「ゼフェル、からむなって。・・・でも、ルヴァ様、確かにそうかもしれませんね。俺なんかわかるような気がします。
そういえば俺もクリスマスはプレゼント交換したし、楽しい思い出いっぱいだったな」
「うっせー、このランディ野郎!やっぱりおめーもめでてー奴だな」
「な!誰がめでたいって?!」
「おめーだよ。ランディ野郎」
「なんだと!」
「もー、ランディ、ゼフェル、やめてよー!」
「あー、ゼフェルもランディもやめなさい。本当に…」
ルヴァとマルセルが俺たちを制する。大体、こいつらがとんでもねーこと言い出したからだろが。 渋々と俺は出しかけた手を引っ込める。
こいつら、怒らすとある意味ジュリアスよりこえーからな。

「うーん、12月は確かに色々な奇跡と感じられるような、素敵なことが起こりそうな、いや起ってほしい季節ですねぇ。
でも、本当の奇跡は…」
「ルヴァ、いるー?ちょっとこの書類なんだけど…ほらほら、アンタたちもいつまでも油売ってないで さっさと執務に戻りなさいー。さあ出た出た」
ルヴァが何か言いかけた時、オリヴィエの奴が邪魔しに来やがって俺たちはルヴァの執務室から追い出された。

「しっかし、そんなもんかよー」
「そうだよ。ゼフェルもちょっとはルヴァ様が言ってたようにやさしい気持ちになってみれば?」
しょうがなく執務室に戻る俺たち。俺の反応にマルセルが諭すような口調で言う。
「けっ、ンなんやってられっかよ。かったりー。めでてーおめーらとはやってられねーぜ。じゃな!」
「あっ、ゼフェル!待ってよ!」
「ゼフェル、サボるんじゃないぞー!」
(・・・ったく、あいつら、バッカじゃねーの。だいたい、ンなわけねーじゃねーか。なーんで年末に限ってンなことがあるんだよ)
俺は駆け出しながらそう思っていた。

そんな話もすっかり頭から消え去った頃、俺たち3人は下界に遊びに行った。
街はすっかりクリスマス気分。
マルセルは嬉しそうだし、ランディもやはり街の空気に浮き足立っているようだ。
ガラじゃねーとは思いながらも、俺もやはり、その街の雰囲気に乗っていた。
俺の星じゃ別に年末だからって特別なことがあったわけじゃねぇ。だからこっちに着てからこのお祭り気分には戸惑うだけだった。
だけど、祭りってーか、騒ぐのは嫌いじゃねーしな。悪くねぇ。

「あ、そーいや、あの本入ってるか見てくる」
「本屋さん?僕も行くよ」
「あ、待てよ、俺も!」
次に来るときはどれだけ時間が過ぎてるかわかんねーけど、一応「その時」一番新しい技術雑誌を街に来たときは買うことにしている。
もちろん研究院から届けてもらってはいるけれど、その雑誌の発行日と聖地での時間との差にもどかしさを感じることも度々だ。
でも、自分で買うことが何かこの星と「つながってる」ような気がしてよ。ガラじゃねーけどな。
本を買って、何気に並んでいる本に俺の目は止まった。

「あ・・・これ・・・」
「ん?何だいゼフェル」
「ルヴァが探してた本だ・・・」
「へー、そうなの?」
手にとって値段を見て愕然とする俺。た、足りねー…なんでこんなに高けーんだ?
「どうしたのゼフェル、買っていこうよ。ルヴァ様喜んでくれるよ」
値段を見て固まりかけた俺にマルセルの野郎が追い討ちをかけるように言う。
「そ、そうしてーのはやまやまなんだけどよ。金が足りねーんだよ…」
「なーんだ。じゃあ僕たちも出すよ。そして3人からのプレゼントってすればいいじゃない。
ルヴァ様にいつもお世話になってるもん。クリスマスプレゼントってことでさ。ね、ランディも、いいよね?」
「ああもちろんだよマルセル。じゃあ決定!この本は俺たちからルヴァ様にプレゼント!ほら、ゼフェル、買ってこいよ!」
こうして不本意ながら?一応この本はルヴァにプレゼントすることが決まり、今俺の手にある。

街の雰囲気を楽しむだけ楽しんだ俺たち。あの本がないことに気が付いたのは私邸に戻ってからだった。
さーっと血の気が引く。
(・・・ちょっと待て俺、よく考えろ。思い出せ、たしかあの時・・・いや違うあっちか・・・?)
行動を思い出しても、どこに置き忘れたのか浮かんでこない。
(奴らに渡したっけ・・・えーと・・・あーっ!だめだっ!!)
時間が時間だ。こんな時間にここを抜け出したのがばれればまたジュリアスの野郎に絞られるだろう。
でもそんなこと言ってらんねー!俺は私邸を出て、今日行ったところを戻って包みを探す。
置き忘れていれば、運がよければまだあるかもしれねー。
しかし下界にもどこにもあの本は見つからなかった。買った本屋も既に閉まっていやがるし。
(あーあ、どーすんだよ俺・・・ルヴァもそーだけど、ランディたちになんて言えばいいんだよ・・・)
頭を抱える俺。


翌朝俺はいつもよりも早くランディとマルセル、それぞれの執務室に行き本を持ってないか聞いてみた。
しかし、どちらも知らないという返事。それに加えて2人に不注意をなじられ責められの言いたいこと言われまくり、
生活態度のことまで言い当てられ、俺も思わず逆ギレしそうになるのを懸命にこらえた。
言いたい放題にかなり凹んじまった俺。
執務室の机に突っ伏す。まー、確かに俺が悪いからしかたないとはいえ、あいつら、この俺様をズタボロに言いやがって・・・。
ちくしょー・・・。

「ゼフェル、入りますよー。書類を持ってきましたが…おやぁ、どうしたんですかー」
机に突っ伏したままの俺にルヴァが声を掛ける。
「・・・なんでもねー」
ルヴァに言うわけにゃいかねーもんな。これは俺(たち)の問題だし。

「ふぅ。また誰かとぶつかったんですか?まったく、あなたという人は…」
いつもと変わらない、ちょっと困ったような、でも優しい声のルヴァ。心の隅がちくんと痛くなる。
「これ、ここに置いておきますよ。きちんと読んでジュリアスに渡してくださいね。あぁ、何があったかは聞きませんが・・・。 よく考えてくださいね」
俺の肩をぽんと叩きルヴァは出て行った。
ンなこたぁ、わかりすぎるほどわかってるよ。俺がみーんな悪いんだ。はあ・・・。

それでもそのあと、ランディとマルセルがやってきて「一緒に探しなおそう」なんて言ってくれたけど、俺の過失だからな。
気持ちだけもらって、執務の合間にちょこちょこと探したんだけど結局見つからなかった。あいつらにも悪いことしちまったな…


それからそれぞれ執務が忙しくてお互い顔を合わせる機会もなかった俺たちをある日ルヴァが呼び出した。
なんだろう。最近は俺もちゃんと真面目にやってたから、叱られるようなことはしてねーはずなんだけどな。
俺はまだしも、あいつらは特に。
「ルヴァ様、どうしたんだろうね」
「うん・・・。ゼフェル、お前また何かやらかしたんじゃ…」
「だーから、なんで俺に振るんだよ!。俺だってわかんねーよ!」
「そうなのか?ごめん俺またてっきり…」
「“てっきり”…何だよ、ええ?ランディ」
「だめー!ほら、ルヴァさまのとこ行かなきゃ!」
全く、ランディの馬鹿野郎が。おっと、今はそれどころじゃなかった。ルヴァのところ行かなきゃな。

「あー、お呼び立てしてすみませんでしたねー。3人とも…。せっかくですからお茶でもいかがですか?」
「ルヴァ、何なんだよ一体。俺たち呼び出して」
「ええ、おいしいお茶が手に入ったので、あなたたちにも・・・とね。さ、3人ともそんなところに突っ立ってないで こちらにお座りなさい」
穏やかな微笑を浮かべるルヴァ。俺たちは互いに顔を見合わせる。

せっかくだからと、マルセルが気を取り直して応接椅子に座る。俺たちもそれに続く。
マルセルのこういう所、俺には真似できねーけど、うらやましいよな。
ルヴァが茶を勧め、俺たちは口をつける。緑色の茶。見慣れないし飲んだこともなかったので
(見た目どおり“緑茶”だとルヴァは言っていた)最初は戸惑ったが、最近はすっかり慣れてしまった。
渋さの中に甘さを感じる。
「おいしいですかー?これはね、玉露っていうんですよ。玉の露って書くんです」
「はい、とってもおいしいです!ルヴァ様、ありがとうございます。玉露…あー、それって蓮の葉なんかにある水滴みたいなことですか?」
「ええ、そんな感じかもしれませんね。リュミエールからいただいたんですよ。視察先で手に入ったって」
嬉しそうなルヴァ。ちょっと複雑な思いが掠めたが、その思いには気付かないふりをする。
「ふーん、ま、まずくはないよな。な、ランディ」
「ん。ルヴァさま、こんな大事なものをすみません。あ、ありがとうございます」
「いえ、いいんですよ。せっかくいただいたんですし、あなたたちにも味わっていただきたいと思いましてねー。
嬉しさのおすそ分けですよ」
「ふーん、それはそれは。ま、ごっそさん」
「ゼフェル、そんな言い方って・・・せっかくルヴァ様が・・・」
「マルセル、いいんですよ」


「で、何なワケ?まさか茶のおすそ分けだけで呼び出したワケじゃないんだろ?執務中によ」
場が和らいだところで俺は疑問を口にする。
「えー・・・あー・・・そうでしたね・・・実は・・・」
立ち上がり机に戻るルヴァ。ランディたちもさっきの和みはどこへやらで緊張しているのがわかる。
引出しから大き目の封筒を取り出し、こっちに戻りその封筒から中身を出しテーブルに置いた。
「・・・これなんですがね、あなたたち見覚えありませんか?」

・・・!
それを見た俺たちは一瞬声を失った。そう、それは・・・
「あ!これ!僕たちが!」
まず口を開いたのはマルセルだった。そう、それは確かに俺たちがルヴァにと買った本の包みだった。
なんで・・・なんで、ルヴァのところにあるんだ?なんで?

「・・・やっぱりあなたたちだったんですか」
俺たちは顔を見合わせ頷く。
「実はですね、公園のベンチに置いてあったらしいんですよ。それを研究院の方が見つけましてね。
・・・失礼とは思ったらしいんですが、一応中をあらためたそうで。えー・・・そうしましたらねー・・・本だったわけで・・・
それでジュリアスに報告したんだそうですね。それから・・・私の方に話が来ましてねー・・・
ええ、こういう本を読むのは私くらいのものですしね…聖地にあったのだから人は限られてきますし・・・
それでですねー・・・念のため下界の書店にも聞いてみたんですよ。こういう専門書を買った人はいるかって。
そうしましたら、あなたたちによく似た特徴の3人の少年たちが確かに買ったというものですから・・・
えぇ、お店の人も本の内容とあなたたちの印象があまりに違うので覚えていたというんですねー・・・」

俺たちは再び顔を見合わせた。
まさか・・・いや、公園・・・?あ、そういえば最後に寄ったな・・・それで・・・確かランディが俺にミネラルウォーターを手渡そうとした時・・・思い出した。
「そうだったんですか!よかった!な、ゼフェル、よかったな!見つかって!!」
「うん、よかった!・・・ルヴァ様、これ、ゼフェルが見つけたんですよ。ルヴァ様が探してたって。
で、ルヴァ様にクリスマスのプレゼントにしようって!ね、ゼフェル」
嬉しそうにランディが口を開きマルセルがそれに続く。
「あ・・ああ・・・」
俺はまだこの出来事が信じられなかった。嘘みてーだけど、でも現実にこれはここに・・・ルヴァのもとにある…
“奇跡”…そんな言葉が思い出されてテーブルの上の包みを呆然と見る俺。

「・・・フェル?」
はっと我に帰り俺はルヴァを見る。にっこりと微笑むルヴァ。
「そうだったんですか…私に贈ってくれるつもりだったんですね。ありがとうございますゼフェル。ランディもマルセルもありがとう」
頭を下げるルヴァ。
なんだか恥ずかしいというかきまりが悪くなるじゃねーか。
「礼なんて言うんじゃねーよ」と言いたかったが ランディたちの手前言葉を飲み込む。なんたって共同購入だしな。
「で・・・せっかくですから・・・私に贈ってくれるつもりだったんですよねー。
封開けちゃったけれど、もう一度私に下さいませんか?ね?」

「ほら、ゼフェル。ルヴァ様に・・・」
「ゼフェル・・・そのつもりだったんだろ」
マルセルとランディが俺を促す。
ンなこと言ったって、今更なんか照れるじゃねーか・・・ったくよー!
ほっとしたような気の抜けたような、そして間の悪さに俺は躊躇する。
「ゼフェル、ダメですかー?」
あーっ、もう!ルヴァもこいつらもー!!
俺はテーブルの上の封筒を引ったくるように取り中身を出す。
赤い包装紙のそれは、一度開封されたとはいえ再び丁寧に包まれている。
それでもあちこち折れが違うところがある。これ、ルヴァが包みなおしたんだろうか。
「あー、あなたと違って私は不器用ですからね。包みなおすの苦労しましたよー」
多分、ルヴァ、たどたどしい手つきで一生懸命やってたんだろう。その姿が想像できる。
少し照れたように言うルヴァに俺はなんだか鼻の奥がつーんとした。
それをごまかすように俺は立ち上がりそっぽを向きながら右手で本をルヴァに差し出す。

「ほ、ほら・・・ルヴァ、こ、これ、俺たちからのクリスマスプレゼントだ。もらって・・・くれよ」
ルヴァは両手でそれを丁寧に受けとり、再び頭を下げる。
「ありがとうございます。大切にしますね。あなたたちからのプレゼントですから」
マルセルなんかは拍手してるし、ランディ野郎もニコニコしていやがる。〜〜〜っ!
「ルヴァぁ、礼なんてすんなよ!てっ、照れるじゃねーか!」
思わず口から出てしまう。が、奴らは怒るどころか更に笑いやがる。あーもうっ!

「ゼフェル、前に私が言いかけたこと覚えてますか?」
「あー、なんだったっけ?」
「本当の奇跡、ですよ」
「あぁー、そういやそんなこと言ってたな。で?」
「本当の奇跡は・・・あなたたちが私の前にいることですよ。この広大な、いくつもの星の中から あなたたちと私が出会って、それも守護聖という形で。
こうしていることこそ本当の奇跡だと思いませんか?・・・一生かかっても、出会わないままの人の方が多いというのに」
「そうですね。僕もそう思います!」
「俺も!」
「・・・確かに・・・そーだな」
ルヴァの言うこと、認めざるをえねーもんな。確かにそうだし。
守護聖になったことも奇跡、こいつらに会った事も奇跡。。。になるんだろうな。
「でも、それって、嬉しい奇跡ですね。僕、みんなのこと大好きだし、もっともっと好きになりそうです。
大好きだから、みんな幸せになってほしいな」
「うん、俺もそう思う。この時期だから特にそう感じるのかもしれないけど」
口々に言うランディたちをルヴァは頷きながらにこやかに見守っていた。

「あ、もうこんな時間ですねー。すみませんねー引き止めてしまって。こんなことが知れたらジュリアスに注意されちゃいますねー。
ごめんなさい。呼んでおいて追い出すのも申し訳ないですけど・・・ああ、また来てくださいね」
「いえ、俺たちこそ長居しちゃってすみませんでした」
「ルヴァ様、ごちそうさまでした。美味しかったです」
「あー、邪魔したな」
「いえ、こちらこそ。本当にありがとうございました」
「だから、頭下げんなって」
「そういうわけにはいきませんよ。私はあなたがたの気持ちがほんとうに嬉しかったし、ありがたかったんですから」
「あー、もう。わかったよ。じゃあ俺たち行くからな。じゃな」
笑顔で俺たちを見送るルヴァを背に俺たちは執務室を出た。

「あー、見つかって、そしてルヴァ様の手元にあったなんてね。ふふっ」
「ああ、そうだな。それにしてもゼフェル、お前のドジのせいだぞ」
「…っつ★ ああ、そーだよ、俺が全部悪りーんだよ。・・・おめーらにも…悪かった。ごめん」
「・・・なんか、そう素直に謝られるとなんか調子狂うな…。うん、気をつけてくれよな」
「なんだよ!人がせっかく下手に出てちゃんと謝ってんのによー!このランディ野郎が!」
「なんだと!」
「ほらー、2人とも。やめなよー。あーそっかー、“ケンカするほど仲がいい”っていうもんねー。ほんとだねー」
「マルセル!!」
思わずランディとハモってしまう。
「・・・って、なんで一緒に言いやがるんだよ!おめーも!」
「ほーら。やっぱりね。ま、いいけどー。でもゼフェル、もう忘れ物しちゃだめだよ」
「…ああ。気をつける」
「ふふっ、でもさ、ルヴァ様の言うこと、もっともだね。違う惑星に育ってさ、守護聖にならなかったら、ぜーったい僕たち会えなかったもんね。
で、それぞれの時間の中でそれぞれ暮らしてたはずなのに。そう考えると、なんかすごいよね」
「ああ、そうだよな」
「でもさ、僕、守護聖でよかったよ。ランディやゼフェルに会えたんだもん。僕ね、2人とも大好きだよ。ふふっ」
「あー、まーな。そういうことにしといてやるよ」
「まーったく、お前は素直じゃないなー」
「うっせーなー、いいんだよっ!」
「はいはい、わかったわかった。じゃ、またな」
「うん、またね」
「おー」
俺たちはそれぞれの執務室に戻る。


執務室に戻ったものの、なんだか俺は落ち着かなかった。
机には座ったものの、なんだか忘れているような気がしてならない。
先日ルヴァが届けてくれた書類に目を通す。あ、これも忘れてたな。でも読んでも何か集中できねー。
“忘れ物しちゃだめだよ”マルセルの言葉が甦る。
「・・・っ!」
俺は立ち上がり執務室を出た。

 

「おやー、どうしましたー?何か忘れものでもありましたかー?」
「・・・・・・・」
ルヴァの執務室にまた戻ったはいいが、このもやもやをどう伝えていいかわからない。
言わなきゃいけねーという気持ち、ンなこと言えっかという気持ちが交雑する。
「?・・・ゼフェル?」
怪訝な顔のルヴァ。えーい、くそっ!
「・・・のさ・・・だからな・・・」
「え?なんですか?」
「・・・クリスマスとか、年末だからとかじゃねー!!お、俺は!ルヴァと出会ったこと、奇跡だって思ってるし!
ありがたいって思ってるし、それに、あんたがいつも幸せ・・・っていうか、そのぽややーんでいてほしいって思ってるんだからな!
わかったか!」
「・・・・・・」
一瞬驚いた顔をするルヴァ。俺、おかしなこと言ったかな…と思った瞬間、ルヴァはとても優しく笑った。
「ゼフェル、ありがとう。私もですよ。私も、あなたと出会えてよかった。神様に・・・いや陛下にでしょうか、本当に感謝しています」
「ルヴァ…」
「本当は優しいあなたが悲しい思いをしないよう、幸せであるようにと私はいつも思っています」
「ば・・・ばかっ、あんたがンなこと、言わなくたっていーよ!俺が・・・、ただ、俺が、・・・あー、もう!帰る!!
俺が言いたかったのはそれだけだっ!じゃな!」
なんだかもうわけわかんねー。でも、気持ちを伝えられたという達成感みたいなもんと、ルヴァの言葉に俺はなんか満足していた。

「さーて、また明日からいっちょやったるぜー!」
俺は晴れ晴れとした気持ちで走り出した。
そう、クリスマスだからじゃない。俺は、俺の好きなやつらがいつも幸せでいてほしいと思ってる。
・・・簡単には言ってやらねーけどな。


「ルヴァとゼフェルの話を」とちぷさんとkiraraさんからリクエストされていたので書いてみました。
いつも困らせてるけど、でもお互いとても大事、ってのを出したかったんだけど・・・出てるかなー
出てればいいなー……で、お二人さん、こんなでよろしいでしょうか?
「クリスマスじゃない」と言いつつクリスマスということで、すべての天使様にメリークリスマス!

2004.12.6 UP
BGM:2004.8〜12 Japanese best hits

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