Let's get togther now

 

「ゼフェル、いるー?」
ノックとともにドアが開く。満面に笑みをたたえながらマルセルはゼフェルの執務室に入ってきた。
「あー?なんだ?」
後ろ手のマルセルが嬉しそうに差し出すプレゼント。
「はいっ、これ♪」
「なんだよ、コレ」
「もーう、ゼフェルったら。今日誕生日でしょ。あのね、これ・・・ランディと一緒に選んだんだよ。えへっ。
ランディも一緒に来たかったんだけど、ジュリアス様との用事があって…で、早く渡した方がいいからって、僕が…」
「あ、そーか。そんな気ぃ遣わなくてもいーのによ。。。あんがとさん」
プレゼントを引き出しにしまおうとする。
「あ、ダメだよ。ね、開けてみてよ」
喜ぶであろうことを期待してゼフェルを見るマルセル。仕方なくその期待にこたえるように包装紙を開ける手がふいに止まる。
「・・・ゼフェル?」

「・・・これ、どーしたんだよ」
「ん、あのね、ランディが買い物に行って見つけてきたんだ。なんだかすごく珍しい基盤と回路…っていうの?なんだって。
アンティークっていうか、古いタイプみたいだね。新しいのもいいけど、ゼフェル前に一昔前の方がいいこともあるって言ってたからって…
・・・気に入らなかった?」
「・・・・・・」
「…ゼフェ…ル…?」
「!!なんでこんなものにしやがったんだよ!よりにもよってこんなものを!」
拳で机を叩き、左手でその基盤を床に叩きつける。
「…!!」
「…ちっくしょー!…出てけよ!」
半べそをかきながら部屋を出て行くマルセルに背を向けるゼフェル。

午後一番にノックもなしにドアが開かれる。
「ゼフェル!」
「・・・ラン・・・」
「マルセルがさっき泣きながら俺の執務室に来たぞ。どういうつもりだ、お前!」
床に落ちているままのそれが目に入る。
「ゼフェル・・・!!」
「ケッ、だっせーの持ってきやがって。どーせならもっといいものくれりゃいーのによ。
お前と同じでダサダサだぜ」
「!・・・お前!」
ランディはゼフェルに近づき襟を掴む。その手を振り払うゼフェル。
「・・・よけーなお世話なんだよ!!」
「おい!待てよ!」
部屋から走り出るゼフェルを呆然と見送るランディ。
 

「あー、ここにいたのですかゼフェル、ずいぶんと探しましたよー」
聖殿が見渡せる小高い丘の上。膝を抱えるゼフェルの隣に座るルヴァ。
「ランディとマルセルに大体の話は聞きましたよ。どうしたのですかー?
・・・ああ、まずはお誕生日おめでとう、ですね。今、貴方に贈るものは持ってきてないのですが…すみませんねーなんせ慌ててたもので」
「・・・・・・・」
しばし沈黙が続く。これは長期戦かなーとルヴァが思い始めた頃、ぼそっとゼフェルが口を開く。
「・・・ルヴァ、・・・あんたさー、時間の流れ・・・って感じたことある?」

「時間の流れ・・・ですか?・・・えー・・・
「そうですねー、私の生まれた頃の時代が研究されてますからねー。感じないといったら嘘になりますがねー…ですが…」
「・・・あいつらがくれたの・・・オレがここにくる前・・・買ったのと同じだったんだ
最新型だったのに…超旧型のレアものだってさ。・・・あれ見た瞬間、『ああ、本当に時が流れちまったんだ』って
愕然としてくやしいような悲しいようななんともいえない気持ちになって・・・あいつらにはひでーことをしちまった…」
「・・・そうだったんですか・・・」
うずくまるゼフェルの頭を軽くなでる。
「貴方はまだ守護聖になってからまだまだ日が浅いですからねー。そう思うのも仕方のないことかもしれませんねー。
そしてこれからもまた同じような思いをすることもあるかもしれませんねー」
「・・・・・・」
「それに・・・それは、前任の守護聖のサクリアによって作り出されたもの、 そして、今のものは貴方のサクリアによって民が作り出したもの。そんな風に進歩していく流れ。と考えることはできませんか?
力は澱むものではなく進化していくものですしね。嬉しいことも悲しいことも、みな貴方の糧になるんですよ」
「・・・オレ、どーしたらいー?」
「それは貴方が一番分かってるはずですよ、ゼフェル」
「ん・・・。・・・少し一人にしてくれないか。ちょっと頭冷やして考えてー・・・」
「はいはい、じゃあ私はこれで失礼しますよ。・・・ああ、いつでもいいですから、私の部屋に来ていただけませんですか。
本来は私が伺うべきなんでしょうが、あなたもいろいろあるでしょうし。では、ね」
ゼフェルの肩をぽんと柔らかく叩き去っていくルヴァ。
「・・・」

 
ゼフェルが部屋に戻ったのは夜も深かった。
「!・・・あ!お帰りゼフェル!待ってたんだよ!」
扉の前にはランディとマルセル。
「お前ら、なんで…」
「ごめん、俺がもっと気の利いたプレゼント贈ればよかったんだよな。だから、これ。今度はちゃんと新しいものだから」
再びプレゼントを手渡すランディ。
「・・・・・・」
「あはっ、改めておめでとうゼフェル!」
「じゃあ俺たちはもう帰るよ。じゃあな」
「・・・あ、待てよ」
「?」
「あ、あのさ・・・せっかくだから何か飲んでかねーか?・・・そ、その・・・オレの誕生日祝ってくれんなら」
「・・・!」
お互い顔を見合わせ頷く2人。

「ごめん・・・サンキューな」
アルコールが入り多少気持ちがほぐれた頃ゼフェルがつぶやく。
「ゼフェル?・・・」
「・・・朝もらったのってさ、オレが守護聖になるほんの少し前買ったものと同じなんだよ。
でさ、これで何作ろうかってすげーわくわくしてさ・・・でも構想中に、守護聖の話が来てそれどころじゃなくなって・・・
結局使わず仕舞いで置いてきちまった。。。だからそれ見た瞬間・・・」
「ゼフェル・・・。もういいよ。お前の気持ちは分かったから・・・」
「だけどよ・・・お前たちから同じモノまたもらえるなんて、やっぱりこいつはオレと縁があったのかな・・・
ありがたく・・・これもらっておく。・・・でも今度はぜってー何か作ってやる!」
「うん!ゼフェル、完成したら見せてね!」
「それから・・・こっちもしっかりもらっとくからな。両方とももうオレのもんだからな。返せなんつってももう遅いぜ!」
「いいよ、どっちも俺たちからの誕生日プレゼントだ。その代わり、すごいの作ってくれよな!」
「おうよ!任せとけって!」
「楽しみにしてるよ。あはっ!ゼフェルお誕生日おめでとう!!」
「おめでとうゼフェル。さ、もう一回乾杯しよう!」

++++++ Happy Birthday!  昨日までの君は死にました おめでとう 
        明日からの君の方が 僕は好きです おめでとう *********

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時代に逆行して初期の年少組の話ですが、発作的に書いてしまいました。
書きながらさだ氏の「Birthday」の歌詞が浮かんできたので使わせていただきました。
「創作」というキーワードをくださったHABOKOさん、ありまと。
歌詞を教えてくださったつぶらさん、ありまと。
そしてちぷさんにはここに出てくるルヴァ様を。

ちなみに、ルヴァ様からのプレゼントは「工学書」。
できたメカはメカチュピだったりします(ホントかよ)
何はともあれゼフェル、お誕生日おめでとう!
そして、すべての天使さまが幸せでありますよう。

2004.06.04 up

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